装画:「五竜の里」佐藤明

安曇野を去った男
ある農民文学者の人生

三島利徳(文化ジャーナリスト・元信濃毎日新聞論説委員)著

ジャンル[評伝・歴史・伝記]
2016年9月20日発行
四六判上製・320頁
定価:3,000円+税
ISBN 978-4-903174-35-8 C0095

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山田多賀市(やまだ・たかいち)という
希代の農民文学者がいた──。

長野県安曇野の貧しい小作農家に生まれ、山梨県で農民組合運動を展開。文学にも目覚め、代表作の一つ「耕土」を発表。戦中は翼賛文学にくみせず、死亡診断書を偽造して徴兵を忌避。戦後の一時期、自ら編集発行人となって雑誌「農民文学」(第一次農民文学=甲府版農民文学)を全国に発刊し、大きな影響力を持った。その後の経済成長期にも、老いてからも社会の変貌を鋭く見つめて小説、評論、随筆を書き続けた。

「永劫の反戦文学者」山田多賀市の衝撃的な行動とその後の文学的逍遥は、時空を超えて、未来へ、次世代へ、語り継がれるべき大いなる意味があろう。これは、ジャーナリスト三島利徳の執念の歴史文学紀行であり、評伝である。温かく透徹した文体の裡に静かな共感を覚えるであろう。

この危うい時代に向けた警世の書である!

第59回農民文学賞受賞作品収載。

[目次]

第一部山田多賀市への旅──農民解放と文学
 序 言葉たちに誘われ
 第1章 ふるさと安曇野
 第2章 伊那谷を経て山梨へ
 第3章 山梨県立文学館
 第4章 文学の師・本庄陸男
 第5章 戦争は嫌だ
 第6章 農地解放と雑誌発行
 第7章 甲府版「農民文学」と犬田夫妻
第二部山田多賀市の新境地──経済成長と農民文学
 はじめに
 第1章 事業の成功と挫折
 第2章 親友で好敵手の熊王徳平と共に
 第3章 歴史もの・説話ものを開拓
 第4章 日差し再び
第三部信念の筆を最期まで──老いと文学
 はじめに──生き抜いて
 第1章 「老人日記」
 第2章 愛弟子・備仲臣道
 第3章 神話批判と古代史考察
 第4章 古代小説「天平群盗伝」
 第5章 農村の町化
 第6章 日本の米のメシ物語
 第7章 反骨をたどる
 第8章 家族の絆、そして終焉
第四部山田文学・農民文学を見つめる
 はじめに
 第1章 文芸評論家・南雲道雄
 第2章 村上林造教授の研究
 第3章 何を学び取るか
山田多賀市略年譜と日本・世界の動き
【資料1】山田多賀市著作目録
【資料2】山田多賀市著作目録補遺
参考文献
[付論]農民文学への熱い思い(現代的展開)
あとがき

三島利徳(みしま・としのり)


長野県安曇野市にある「山田多賀市生家跡」の標柱と三島利徳

1947年長野県下伊那郡豊丘村生まれ。
飯田高校を経て静岡大学人文学部外国史学専攻を1970年卒。
同年、信濃毎日新聞社入社。報道部、更埴支局、臼田支局、文化部デスク、部長を経て、2001年から論説委員。2012年8月、同新聞社を退社。
文化部時代は作家中村真一郎、歴史家奈良本辰也、作家高田宏、ドイツ文学者小塩節、随筆家堀多恵子(辰雄夫人)、随筆家室生朝子(犀星長女)各氏ら多くの名文家の知遇を得る。
論説委員としては社説や一面のコラム「斜面」を書いた。
2008年から長野県カルチャーセンター「文章を書く」講座講師。清泉女学院短期大学や長野赤十字看護専門学校の講師も務める。

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