学芸図書出版 人文書館

応援メッセージ

祝 出帆! [知的な驚き]そして、[感銘]を心待ちにしています。
 
私の『花に逢はん』『夏椿、そして』を世に送り出してくれた道川文夫氏が、この秋に、人文書館(ZINBUN SHOKAN)を独立させました。退社と新しい書館立ち上げの知らせに、私の心からの響きは快哉さえ覚えました。ふる里沖縄の方言で、[人文](ZINBUN)とは、知恵とか才能を意味します。まさに、語韻からしても吉兆なり。
時代は今、大きな錯誤の中にあります。さも、[利便]と[利潤]と[効率]こそが、混乱の極みにあるこの国の現況を、立ち直らせてくれる鍵だと信じこまされています。すべてが足早に、あらゆることに手を抜き、この国人は従順にして、怒りまで忘れてしまいました。特に、人と人の距離がますます遠くなり、その極め付きは、子どもたちに他人を信ずるな、声を掛けられたら大声を上げ、逃げよと教えている。この国の民人の疲れた顔と眉間の皺の深さを見よ。
このような時代だからこそ、文化の柱を担ってきた出版人たち、特に、志の高い骨太の編集者たちは悩みつづけている。
利への右顧左眄か、理にこだわり、あえて時流に逆らい、荒波に舟を漕ぎ出すかを。そして道川氏は後者を選んだ。ありがたいことに、その道川氏から、私の次作の書き出しを促すかのように、書名案まで送られてきた。まだ、一行もつづらないうちにである。
決意だけは固めました。付箋とびっしりと書き込みがなされる本をかきたい。
 
伊波敏男[作家/信州沖縄塾塾長]

いよいよ今年も押し詰って来ました。
この一年を振り返ってみると、貴兄及び貴社は本当に大きな仕事を成し遂げられたと思います。ピサロの評伝の吉田秀和賞受賞おめでとうございました。この受賞が朝日新聞文化担当の編集委員を動かし美術館へ足を運ばせたのをはじめ、立花隆氏が評論の件で貴社の本を引用するなど、出版不況の中、簡便な新書に傾斜していく現在の出版社に対し、本格的な本創りで挑んで、その足固めをした一年だったと思います。新しい年でも一層のご活躍をお祈りします。
 
2007年12月21日
安藤龍男(元日本放送出版協会〈NHK出版〉社長・元NHK理事)

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